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私邸周辺


初春大歌舞伎・夜の部:通し狂言『霊験亀山鉾』

今年も初春大歌舞伎に行ってきましたよ、しかも通し狂言『霊験亀山鉾』は関西では77年ぶりぐらいの上演らしい。
そういう事で、夜の部です。

松竹座は近くにお弁当を買えるスポットがこれでもかというぐらいあるのですが、結局いつもづぼらやでふぐ寿司を買ってしまいます。
くいだおれ人形が本当にいなくなっていたのが地味にショックでしたが、そういえばいつも見てるだけだった。

閉店といえば、いつも番付(プログラム)を開場前に買えて便利なので利用していた紀伊国屋書店松竹座店が今月で閉店みたいな案内があったのですが、どうなるんでしょう?
演劇・古典芸能関係の本が充実していて良かったのですが。

お弁当とプログラムを買って、準備万端で開演を待つといういつものルートが……

そんなこんなで感想本編です、配役とかは運がよければこのあたり



通し狂言『霊験亀山鉾』
序幕 甲州石和宿棒鼻の場より播州明石網町機屋の場まで
もうすでに一人犠牲が出てる状態でスタート、藤田水右衛門は石井右内を闇討ちして「鵜の丸」の一巻を奪った石井家の仇。そして弟の石井兵介が仇討ちに挑むという幕開け。
水右衛門が仁左さんで兵介が進之介さんだからかどうかは知りませんが、別に毒を使わなくても水右衛門が勝ったんじゃないの?というぐらい迫力のある水右衛門。
しかし、そこで毒まで使うあたりが極悪クール。
毒で弱った兵介をサクッと返り討ちにして、毒なんて知らないかのように去っていく水右衛門。

一方、こちらも水右衛門の行方を詮議するため、明日には旅立たねばならない右内の養子・源之丞、隠し妻のお松との名残を惜しみます。もう子どももいるのに正式に石井家の嫁ではないので隠し妻らしい。
源之丞が愛之助さんで、お松が孝太郎さん。仇討ちをしないといけない源之丞と、仇討ちの過酷さを思い夫の無事を祈るお松の仲睦まじい夫婦愛がこの場面で感じられるだけに後で源之丞にムカつきます。
実父から与えられた千寿院力王という刀と養父から与えられた仁王三郎の脇差、そして母から届けられた路銀を手に源之丞は水右衛門を追う旅に出ます。

二幕目 駿州弥勒町丹波屋の場より同 中島村焼場の場まで
さっきとはうって変わって華やかな揚屋の様子、お気に入りの芸者が来なくてお怒り中の官兵衛を仲居達がなだめています。
そんなに気に入られてる美人の芸者おつまが扇雀さん、官兵衛が翫雀さんだから兄弟揃ってますね。
ところで、おつまは源之丞の子を身ごもっているらしい。あんなにお松と名残惜しそうに旅に出た源之丞ってば、仇討ちのために香具屋に化けている間におつまと深い仲になってるとか。おいこら。
しかも女将のおりき(秀太郎さんがうさんくさくてよかった)にも気に入られてるっぽいし、なんじゃそりゃー!
そんなツッコミどころ満載な源之丞ですが、何となく愛嬌があるのが愛之助さん。
一方、水右衛門の顔を知る金六が水右衛門に似た役者が描かれた団扇をおつまに預けて去っていきます。当然、団扇を預ける時に「上方で大人気の片岡仁左衛門」というお決まりのネタあり。
そこに水右衛門のそっくりさん八右衛門が登場して、舞台はさらにややこしく。
しかも、登場時に
丸に二引きはエー、アリャサ、あれは仁左衛門さんの紋所
仁左衛門ササササ、仁左衛門さん
とか歌も入るし、どう見ても仁左衛門さんです。
で、本当に水右衛門かを確かめるために心変わりしたふりをして八右衛門に身請けされようとするおつまと、空気を読まずにヒドイ事を言って去っていく源之丞…って、お前もそもそも妻子持ちの身でおつまと深い仲になったんだろー!
心ならずも八右衛門に甘い事を言っている間に、本物の水右衛門を発見し、密書も手に入れたおつま。
何とか八右衛門を追い返し、事の次第を手紙に書いている間に、仇討ちの事を知っている(&自分を裏切ったと思い込んでいる)おつまを消そうと刀を構えて源之丞がやってきますが、今度はちゃんと手紙を読んで再びおつまの愛を胸に水右衛門の密書を読んで、安倍川で待ち伏せしようと金六と立ち去ります。それが罠とも知らずに。
実は官兵衛も八右衛門も水右衛門の仲間、水右衛門のために偽密書を源之丞に渡しておびき出すための計略!しかも落とし穴とか掘ってるし、たくさん人を雇って源之丞たちを襲うし!
でも源之丞も仇討ち以外は不真面目なので、返り討ちにあってもそんなに同情できなかったりして。
それより残された妻子と、巻き添え食らった金六が可哀想です。
そこに早変わりで現れた愛之助さんの袖介、元源之丞の下部です。
ぎりぎり金六が生きているというありえないタイミングで現れますが、気にしない。
源之丞が返り討ちにあった事など、事の次第を袖介に託して息絶える金六…イケメンなのに!(注:イケメンなのは薪車さんです)
形見となった刀を拾い上げて源之丞の成仏を願う袖介の元に、水右衛門やおりき、おつま、さらには亀山半の重臣の頼母も出てきて闇の中でだんまりやってる間に千寿院力王は袖介、仁王三郎はおつまに。

場面変わって中島村、狼騒動が起きているらしい。焼場が近いので棺桶を担いだ人も通る場所という事で棺桶に潜んだ水右衛門をおりきが運ばせています。
そこに同じような棺桶(源之丞)が運ばれてきたところに、やたらプリティな狼が!という事でゴチャゴチャしている間に棺桶は取り違えられて焼場へ。
焼場で源之丞と最後の別れを惜しむおつまのところに火を持ってきたのは何と八右衛門!急に振られた恨みで襲い掛かってきますが、形見の仁王三郎で斬られて井戸の中へ。
水右衛門の棺桶が焼場に運ばれた事を知ったおりきがやってきますが、おつまに斬られます。
仁王三郎の力なんでしょうかね、おつま強すぎ。
しかし、棺桶の中から現れた水右衛門におなかの子どももろとも斬られるおつま。
雨の中の凄惨な場面と、水右衛門の残酷な台詞が極悪すぎてカッコいい。
仁左さんの細さが人間とは思えない残酷さの水右衛門とマッチして、酷いのに目が離せない場面でした。

中幕 春寿松萬歳
30分の休憩を挟んで、夜の部で唯一といっていい正月らしい舞台。
藤十郎さんの踊りは格調の高さとめでたさがお正月してました。

三幕目 播州明石機屋の場
場面は再びお松の家、夫が返り討ちにあった事も知らず機織をしながら病を抱えた息子・源次郎と源之丞を待っています。行方不明の兄・袖介も案じています。健気だ、健気な役の孝太郎さんは本当に健気だ。
そんなお松の織物をやたら高く買っていく商人、実は姑の貞林尼の心遣いだった。そんな姑の心遣いに感謝していると、貞林尼が現れて孫である源次郎と対面を果たし、源之丞とお松を祝言させるという。喜ぶお松、しかし源之丞は位牌……源之丞が返り討ちにあったと話し、形見の刀を袖介に持ってこさせる。源次郎が仇討ちをしなくてはならないが、幼少の上に病まで抱えており、その病は人の肝の生き血が必要という事で袖介が腹を切ろうとするが、貞林尼がそれを止め、孫のために犠牲になる。病が治った姿を見届け、親類の頼母を頼るようにと告げて息絶える貞林尼……その優しい表情は、さっきまでおりきをやっていた秀太郎さんと同じとは思えないほど優しかった。
秀太郎さんってすごいなあ……

四幕目 江州馬渕縄手の場
水右衛門の父、藤田ト庵は偽の鵜の丸の一巻を持っている。そこに鵜の丸を捜す袖介が現れると、右内を討ったのは自分だと告げて袖介の刀を自分に刺して水右衛門の身代わりになって息絶える。我當さんは無茶のある設定でも説得力があるので、極悪な息子の身代わりになる父の愛を感じました。しかし、その息子は父が討たれたと知って冷静さを失うという皮肉な展開。極悪な水右衛門も親に対しては人らしい感情があった、という場面だと仁左さんは言っていますし、仁左さんがそういう風に演じているのでそう見えますが、冷静に考えたら勝手な話だ。

大詰 勢州亀山祭敵討の場
亀山城下が祭で盛り上がる中、頼母の計略によっておびき出された水右衛門。
お松と源次郎、袖介が水右衛門と祭の風景の中で大立ち回り。
源次郎の役は上村吉太朗くんという子なのですが、立ち回りがすごくいい感じなので気のせいか最初の場面より仁左さんもやりやすそうに見え(以下自粛)
そして、ついに水右衛門は討たれ、石井家の面々は本懐を遂げてめでたしめでたし。

頼母の息子の役で薪車さんが最後の場面にもいました、イケメンだ。

この話、仇討ちと計略の話の上に同じ顔の人まで登場してすごくややこしいというか、書いていても整理が必要なのですが、一切の舞台では皆さんの演技力ですごくわかりやすかったです。
またやってほしいです、次が77年後にならないように祈ります(笑)
by iwanagahime | 2009-01-30 23:47 | 歌舞伎周辺

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