歌舞伎では沼津の段でおなじみの伊賀越道中双六ですが、なかなか通しでは上演されないので文楽で観てきました。
吉田蓑助さんや桐竹勘十郎さん、そして咲大夫さんや住大夫さんといった皆さんの芸はやはり素晴らしく見ごたえがありました。
大筋は和田家の仇討ちの物語で、こういう話にありがちな巻き込まれる庶民パートが沼津です。
なので、初めて和田さん家の物語を見た感じです。
しかし仇討ちに参加するために犠牲にするものが多すぎなのと、我が子を犠牲にするパターンは歌舞伎や文楽でよくあるのですが、たとえば松王丸の息子や政岡の息子は子どもなりに覚悟があり、それがまた涙を誘う感じなのですが、政右衛門の子供は完全な赤子なのでちょっと気分的に落ち込みました。
そして、仇を討つべく全国を旅する和田家の息子の志津馬は敵を欺くために病気と偽って油断させたりちょっと卑怯なので何となく引っかかりました。
しかも、沼津でおなじみの十兵衛は二つの家の間で板ばさみになった挙句に志津馬に斬られるし。
仇討ちのために犠牲にするものの多さで武士の複雑さを感じるのも良いのですが、中盤が鬱展開すぎるので最後であまりスッキリせず上演も頻繁でないのかなと思いました。