国立文楽劇場の初春文楽公演に行きました、やはり阿古屋が見たかったので第2部で。
あちこちに初春らしい飾りもあり、また技芸員さんと人形達のお出迎えもあって賑やかでした。
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『面売り』
面売りの娘におしゃべり案山子(占いでも何でも口先一つで商売をしている人らしい)がコンビで面を売ろうと持ちかけ、おしゃべり案山子の売り口上で面売りの娘が様々な面を付けて踊ります。
お人形さんがお面を付けてるのが何となく不思議で可愛い。
福助やおかめ・ひょっとこなどめでたい雰囲気なので、お正月らしく華やかでした。
『近頃河原の達引』
おしゅん・伝兵衛の心中物ではありますが、伝兵衛のやむにやまれぬ事情やおしゅんとその家族の心情などが心打たれる物語。
意外と笑いどころもあって、おしゅんの兄(猿曳き)が面白い人で、お母さんが伝兵衛の事を諦めるようおしゅんを説得している脇でご飯を食べ始めたり(しかもおかわり)しているのが逆にリアル。
ちょっとうっかりものっぽい空気を出してるのが、後のおしゅんと伝兵衛の取り違えに繋がってる感じがして面白い。
これからの行く末をわかりながらも夫婦として二人を送り出すために猿を舞わせるお兄さんと、帰って来れない旅とわかっていても一日でも長く逃げて生きていて欲しいというお母さんの気持ちが胸を打ちました。
『壇浦兜軍記』
阿古屋琴責、文楽では2度目で歌舞伎も入れると3度目の観賞です。
歌舞伎では傾城の姿で演じながら楽器を弾くのが眼目ですが、文楽では実際の演奏に合わせていかに人形が演奏しているように観えるかがポイントと思われます。
なぜ楽器を演奏するよう言われたのかわからないながらも切々と景清への想い、馴れ初め、行方を知りたいが知りえない切なさを演奏し歌う阿古屋は人形と楽器のシンクロの上に存在していました。
勘十郎さんの阿古屋は水責めなどのストレートな拷問では、逆に何も聞き出せないだろうという雰囲気が出ていました。
文楽はやはり人間ではないからこそ出来る表現が逆にリアルに訴えかけてくるので、歌舞伎を見慣れていても新鮮に感じる演目が多いです。
初春公演は終ってしまいましたが、2/28の近鉄アート館の「あべの文楽」や3月の地方公演、そして4月の菅原伝授手習鑑の通しなどまだまだ続くので是非とも実際の舞台を観に行ってください。