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私邸周辺


幕見とシネマ歌舞伎

初春の松竹座は幕見で2演目、シネマ歌舞伎も2演目だったのでまとめてで更新します。

まずは鴈治郎襲名の松竹座から、夜の部の『封印切』と『棒しばり』を観ました。
松竹座1月・がんじろはん[画像]
口上姿の鴈治郎さんの大きなパネルなどもあり、襲名ムードを盛り上げています。

『封印切』
忠兵衛は意地と勢いで公金を横領してしまいますが、そこにいたるまでのプロセスが大事ですね。
廓の女将であるおえんは何としてでも梅川と忠兵衛を添わせてやりたいという気持ちがありますが、最初に忠兵衛と梅川をこっそり会わせた時に「若い人はどうしてこうじゃらじゃらじゃらじゃらと」と言いつつ夫と恋人だった頃の思い出を語っているあたり、好きな人と一緒になって幸せだから自分の店にいる遊女も好きな人がいるなら添わせてあげたいという気持ちなのかと思いました。
秀太郎さんは細かいリアクションやちょっとした笑い声など、廓の女将さんはきっとこんな感じだっただろうなという何かがありました。
忠兵衛は梅川が好きなばっかりに、お金もないのにこっそり梅川に会いに来てしまうのでだらしないと言えばだらしないのですが、鴈治郎さんの愛嬌のある姿はだらしないというよりそんなに会いたかったんだなあと思わせました。
梅川は扇雀さん、美しくて優しそうでいて、忠兵衛と運命を共にする覚悟を決めるきっぱりとした雰囲気がよかったです。
仁左衛門さんの八右衛門はイケズなのに妙な愛嬌があって、総すかんの八っつぁんと呼ばれているとおえんに言われた仕返しにお前らにモテなくても金にモテるんだと「金の方から八っつぁ~ん八っつぁ~ん言うて寄って来よんねん!ウヒャヒャヒャヒャ」と言ったり、忠兵衛に本当はお金がないのだろうと言ってあれこれさせる目を背けたくなるような場面も面白く観られました。
しかし、観客は楽しく観ても忠兵衛の実家の父まで引き合いにだしたのがよくなかったのか忠兵衛は公金を謝って封印を切ってしまい、その勢いで横領して梅川の身請けの代金を払ってしまいます。
幸せになれると思ったのに、追われる身になった忠兵衛に添う決心をする梅川。
何も知らずにめでたいめでたいと囃す周囲と、冥土へと向かう二人のコントラストが切ない幕切れでした。

『棒しばり』
大筋は狂言と同じなのですが、歌舞伎では音楽も賑やかなので縛られた状態での踊りに焦点が当てられている感じで、狂言版をストレートプレイとすると歌舞伎版はミュージカルっぽかったです。
あと、歌舞伎版だと大名に曽根松兵衛という名前があります。亀鶴さんがキャラの濃い太郎冠者と次郎冠者に負けずに雰囲気を出してました。
棒術を自慢しようとして縛られる次郎冠者は愛之助さん、次郎冠者をまんまと騙したつもりが自分も縛られてしまう太郎冠者は壱太郎さん。
二人とも身軽なので縛られてから酒蔵を開ける場面、そして縛られた状態での踊りなど見応えがありました。
壽初春大歌舞伎の一日を締めくくる、楽しい踊りでした。

演劇

続いてシネマ歌舞伎『二人藤娘/日本振袖始』
シネマ歌舞伎・二人藤娘[画像]
『二人藤娘』は玉三郎さんと七之助さんという同じ組み合わせで2014の松竹座でもありまして、それは実際の舞台を観る事が出来ましたがこれは歌舞伎座での収録です。
『日本振袖始』は初めて観ます、玉三郎さんと勘九郎さんはもちろん稲田姫の米吉さんが楽しみです。
舞台の映像の前に玉三郎さんのお話がありまして、演目の説明やシネマ歌舞伎についてなど本編をより深く観られるような内容でした。

『二人藤娘』
藤の精が二人で舞うというだけでも華やかなのですが、お酒を注ぎあう場面など男と女の見立てなのかそれとも二人の藤の精の気まぐれなのか妖しい画面が展開します。
すっきりとした七之助さんの姿と、空間を包み込むような玉三郎さんの存在感が美しいです。
間に舞台裏の場面などが入るのですが、藤の精の衣装なのに普通に歩いている姿が舞台と違ってやはり男性に見えて、逆にこの二人の舞台でのすごさというものを感じました。

『日本振袖始』
素盞嗚尊の八岐大蛇退治の話ですが、ここに岩長姫が娶られなかった神話を加えて脚色したのがこの演目です。
岩長姫は自分が娶られなかった悲しみから八岐大蛇に変じ、美しい女を根絶やしにしようと生贄に要求ます。
今年の生贄は稲田姫ですが、素盞嗚尊の助言で一振りの剣を袖に隠しています。
無駄にイケメンな村人の功一さんを先頭に生贄の台に稲田姫を連れてくる村人達、八岐大蛇は男にも女にも化けられるとか酒を好むので毒酒を用意したとか説明していますが恐ろしい風が来て稲田姫を残して去ってしまいます。

さて、そこに岩長姫がおどろおどろしくやってきます。玉三郎さんの姿に化けられるなら別にいいじゃないかと思いますが、過去の出来事からの恨みがあるのでしょうがない。
稲田姫を飲み込もうとしますが酒に気がついて甕にしがみついて飲んでいます。
姿は美しい姫のような姿ですが、それゆえに不気味さが増すというか藤娘のお酒を飲む場面と風情が違いすぎます。

そんな不気味な場面が終わり、稲田姫が飲み込まれてしまったと思った矢先に素盞嗚尊がやってきます。
遅い!と思いますが、いよいよ蛇体の本性を表した八岐大蛇との決戦です。
玉三郎さんプラス7人で8つの頭を表現しています、時には全員で素盞嗚尊に襲い掛かり、また順番にポーズを決めたりと8つの頭を持つ大蛇という独特な動きです。
勘九郎さんの素盞嗚尊はいかにもヒーローという感じで好感が持てます。
戦いの末、恐ろしくも悲しい八岐大蛇は空しく倒されてしまいます。
八岐大蛇の体内から助け出される稲田姫、米吉さんの可愛らしい姫姿が際立ちます。

玉三郎さんも見事でしたが、中村屋兄弟に米吉さんという若手も楽しめるシネマ歌舞伎でした。
by iwanagahime | 2015-01-31 14:21 | 歌舞伎周辺

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