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にっぽん文楽in難波宮(昼の部)に行きました。
大阪歴史博物館前に宮大工さんの作った野外舞台を設置しての文楽公演で、解説もあり。
普通は解説というと文楽そのものの解説か演目の解説なのですが、今回は特設舞台の紹介もありました。
設計の田野倉さんと宮大工さんで、田野倉さんによると薪能などで特設舞台を作る時はほとんどの場合は屋根がなく、その場合は特に届出などは必要がないのですが、屋根を付けると建築基準法に従わないといけないので強度計算をして設計したとか。
また、大宰府の宮大工さんの製作ですが、東京での公演も大阪での公演も現地の宮大工さんに組み立ててもらうそうで、日本の伝統的建築物は各パーツ名前があるので、名前と番号があればどこの宮大工さんでもどの部分のパーツかわかるという話も面白かったです。
そして日本の神社仏閣はコンビニより多く、コンビニがない山奥などにも神社やお寺があるので、宮大工さんはそのお寺や神社を建てるために共同生活をするという話もありました。
続いて吉田一輔さんの人形解説、だめな例を交える事によって、舞台を見ている時は意識しない人形の仕草がどうやって作られているかがわかりやすかったです。体験コーナーもありました。
人形解説の後、撮影コーナーを挟んで最初の演目の二人三番叟がありました。
真面目な三番叟と見せかけて、途中で面白い顔の人形がさぼっているのを真面目な顔の人形がとがめたり、その真面目な顔の人形も面白い顔の人形が見ていない間にこっそりさぼったりという場面があるので、初心者もとっつきやすいかと。
鈴や扇を使っての舞、テンポのいい音楽とノリがよくてめでたかったです。
次の奥庭の前にまた解説コーナーがあり、太夫の豊竹靖大夫さんと三味線の鶴澤清𠀋さんが登場しました。
文楽で太夫・三味線が演奏をする床には長い演目で複数の太夫・三味線が入れ替わって語り継ぐため、入れ替えをスムーズにする盆回しが付いているのですが、今回も東京でも短い演目しか上演しなかったので本編では盆は回らず、解説コーナーのためだけに回すそうです。
また、今回は野外でしかも高速道路などが近いために不本意ながらマイクを付けているという事ですが、本来は広い劇場でもマイクレスで語っているそうで。
太夫の語りわけは子供でもやんちゃな子供と真面目な子供、同じ女性でも立場が違う女性など男女や大人子供ではなく子供同士、女性同士の語りわけが面白かったです。
三味線は「文楽の三味線というと地味なイメージですが、ほんまに地味なんです。私ね、これ名前が原因なんやと思うんですよ。人形浄瑠璃って人形は見たら舞台に立ってますよね、浄瑠璃は太夫の語りを指すという事で三味線が入ってないんですよ!だから皆さん、これからは人形浄瑠璃三味線という意識でお願いします」と、スタートからかなり飛ばしてましたが、その後も自虐ネタを交えてわかりやすく、「好きな人にメールを送ったんですけど返事が来ないんで、文章が事務的すぎたかなーと思って悲しそうな顔文字を付けたんです。その悲しそうな顔文字を付けた感じを、三味線で表現します」など、身近な例を挙げながら三味線の感情表現を解説していて面白かったです。
そしていよいよ奥庭、許婚の危機を知りながら何も出来ずにいて翼がほしい、翅がほしい、飛んで行きたいという八重垣姫の気持ちと、諏訪の兜の不思議な力と狐の守護というファンタジー要素がありますが、人形ならではの自由な動きと表現がどちらも余すことなく実体化していました。
解説の途中で騒音が気になる事もありましたが、いざ舞台が始まると集中させるものがあるためか騒音がある気がしなかったです。
カーテンコールでの挨拶もあり、これで初めて文楽を見た人もまた文楽劇場に行くきっかけになると思える良い舞台でした。