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文楽の国性爺合戦を観ました、明国を舞台に和藤内(鄭成功)が活躍するという文楽では異色の物語ですね。
歌舞伎でも演じられます。
明ではあるのですが、どちらかというと「昔の日本人が頑張って想像した中華風」な舞台で(料理も想像なので、牛のかまぼことか台詞に出てきます)悲しい場面も多いのですがとにかく煌びやか。
そんな煌びやかな中華風セットのなかで和藤内の日本人母が一人、文楽のお婆さん衣装の中でも特に地味な格好で出ているので印象に残ります。
和藤内の父である老一官が大陸に残してきた娘の夫である甘輝に協力を頼むため交渉にあたるのですが、甘輝は「自分も明国の旧臣なので明を取り戻す手伝いをしたいが、妻の親類だから手を貸したと思われては顔が立たない」と言われ娘を斬ろうとします。
しかし、息子と自分の夫のために義理の娘を犠牲にしたとあれば義理の母である自分だけでなく日本の恥になると娘を守るという場面では国によって顔の立て方が違うために交渉が難航という今の時代も通じそうな緊迫感がありました。
結局は娘の自己犠牲と、それを見届けた母の犠牲で明の建て直しの第一歩として鄭成功と甘輝の協力が成立するのですが、日本風の地味な老女である母と中華風の華やかな娘の見た目は対照的な二人が同じ目的のために誇り高い自己犠牲をするというのが印象的でした。