『牡丹亭』が南座で上演された時には生で見ましたが、これは蘇州公演とそこに至るまでのドキュメンタリーをあわせて上映という事で観に行きました。
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ドキュメンタリー部分では、昆劇院の俳優さん達との交流や蘇州の言葉を覚える大変さや大学での講演などがあったり、牡丹亭の雰囲気が感じられる古い庭園に行った時の様子があったりと貴重な映像が満載でした。
だけど、いくら外国でも車の間を縫って横断するのは見ていてヒヤヒヤします!
歌舞伎と昆劇のジャンルの違いや、ジャンルの違いと関係なく「演じる事」という表現での交流や、玉三郎さん自身の演技に対する考え方などが随所に見られました。
それはよかったんですが、庭園での映像などのイメージ映像みたいな部分が何となくソニーっぽいというか、壮大なソニーのCMみたいな感じが何かしらあったような。
全然ソニーとは一言も言っていないんですが、カット割りとかナレーションやBGMが何となく。
そして『牡丹亭』本編、残念な事が玉さまが杜麗娘を演じていないシーンがカットされているらしく、ドキュメント部分で玉さまが演技を指導していた杜麗娘役の別の女優さんのシーンがありません。
時間の都合もあるとは思いますが、そこだけちょっと残念でした。
杜麗娘はただただ夢の中で出会った柳夢梅に恋をし、思いを募らせて命を落とし、幽霊になって柳夢梅の元にやってきて生き返らせてもらうという歌舞伎ではありえないぐらいの受身キャラなのですが(少なくとも、現在多く上演されている歌舞伎の主役キャラの女性はお姫様でも積極的、思いを募らせて病に伏せる場合も相手が行方不明とか指名手配中とか状況がヘビー)全体に大らかな内容なので、この受身さも愛嬌かなと。
そもそも夢の中での出会いも、神様が「婚姻の宿命なので出会わせよう」と言って出会っているので、最後に生き返っても神様がそう言ってるからしょうがないかというような感じですね。
白雪姫よりは納得できるような気もします。
それに、生き返る場面に登場する女道士がナイスキャラなので、より「あー、生き返ってよかったね」という感じになれますね。
南座では杜麗娘が命を落としてしまう場面で終わりだったのですが、今回は杜麗娘が生き返り柳夢梅と結ばれる場面で終りなのでめでたしめでたしで終れてよかったです。
本当は間に色々あるのですが、この場面なしはちょっと厳しいので。
カットされた部分は多いようですが、南座の公演でラストが知りたかった人にはいいと思いました。