一年前の自分に言っても信じてもらえないでしょう、今だって信じられないですから。
重い病気だったとか色々と説明があっても「何で?」としか言えません。
少なくとも私が観た舞台では、いつでもエネルギーが舞台全体に広がってるようなイメージだったので。
初めて生の舞台で観たのは松竹座でのニューヨーク凱旋公演『夏祭浪花鑑』でした。
新しい演出に目を奪われがちですが、舞台が鏡張りになってもアメリカンポリスに追われてもしっかり歌舞伎でした。
そしてカーテンコールでの一言。
「こんな嵐の中、おいでいただいてありがとうございました」
と台風の中で集まった観客に対してサラッとカッコよく気遣っていました。
昨日の事のようにはっきりと思い出せます。
いつでもこの時のように、さりげないサービス精神がカッコよくて江戸っ子の粋とはこういうものだろうかと関西人ながら思っていました。
勘三郎襲名披露、平成中村座や歌舞伎座さよなら公演と観た舞台の一つ一つがはっきりと思い出されます。
忘れる事はないでしょう。
そんな濃い存在の人が新しい歌舞伎座にいないというのは寂しいどころでは済まされないですが、それでも舞台に立ち続ける歌舞伎俳優の方々、ご子息の勘九郎さんや七之助さんに中村屋のお弟子さん達を応援していきたいと思います。