シン・ゴジラ見てきました。
パンフレットにも「ネタバレ注意」と大きく印字された帯が付いているぐらいで、よほどネタバレに配慮した映画なのだと思い、逆に公開から約1ヶ月して散々ネタバレを見てから行きました。
結論から言うと、ネタバレを見てからでも充分に凄い映画でした。
そうは言うものの、世間の人がみんな私のような人間という訳ではないので以降はネタバレ嫌な人は読まないでください。
地震に限らず豪雨による水害や土砂崩れなど各種の災害が発生する日本なので、自分自身の災害の体験を思い出すという感想が見受けられましたが、私も自分と家族の被害はそんなでもなかったとはいえ阪神淡路大震災の被災エリアの端っこぐらいにはいたので記憶が掘り返される部分もありました。
ゴジラが歩いた後の惨状を空撮したような映像を見た時には、そんな事があったのも忘れていたと思っていたのに、まだ「温泉場みたいですねー」と言ったキャスターの事を根に持っている自分に気が付いたり(発言した人はもうこの世にはいないのに)
そんな「災害であるゴジラ」なので、私が小学生の頃にはすでに人気キャラクター的だったゴジラとは違う恐ろしさがありました。
その時期のゴジラ映画ではスルーされていた存在であろう法律や政治家や官僚の対応に国際的な調整など。
そして、官房長官などの会見に手話通訳が付いている事から感じられる普通に障害を持った人や老人などがいる世界での出来事であるリアル感。
国民の混乱を避けようと推測の段階である「上陸はない」という発言をしてしまったがために、事実と反する内容の会見になってしまう結果。
そして海から出現したゴジラの魚類や両生類を思わせる、絶対に意思の疎通が出来なさそうな形態。
ゴジラがキャラクター化していった要因の中に、二足歩行で何となく話が通じそうというのもあるのではないかと私は思いました。
今回のゴジラも最終的には従来のゴジラと同じような二足歩行の形態になりますが、まずあの魚のような目と体液を流す鰓の姿を見せる事が都合よく怪獣と心を通わせる少年少女なんてものは出て来ない事をうかがわせました。
今まであった事のない巨大不明生物災害なので甚大な被害が発生してもゴジラを攻撃するために会議を開いてミーティングを重ねないといけないし、決断も一つ一つが重い。
結果はどうであれそれなりに国民の事やゴジラを止めようという事を優先的に考えたのに、都心にやってきてしまうゴジラを見た時の絶望感は画面の中の人物とだんだんと共有するようになって行きます。
あれだけ会議を重ねた末に行われた自衛隊の総攻撃も効果がなく、米軍の兵器でゴジラが苦しむのを見て「さすが米軍」と言った総理に機嫌が悪いような表情を見せる防衛大臣にちょっとクスッとなる程度には登場人物のキャラクターに親しんだ所で襲う大破壊。
崩れ去る東京の街、それまで画面の中で色々な表情を見せていた閣僚達の乗り込んだヘリコプターも一瞬で破壊され、悲しい音楽の中でゴジラさえ苦痛に満ちた表情に見えます。
絶望感しかない場面の後でも画面の中では政治的空白を長引かせないため、早急に組閣されゴジラの対応を進めないといけない政府は動いていきます。
リアルな避難の様子など、深まる絶望の中で新しい発見があるとちょっと沸き立つ感じになる分析グループが希望。
政府がゴジラの対応に苦慮している中、ゴジラに対して核兵器を使うという国連の決議が通ってしまうという。
何とかして核兵器発射前にゴジラを凍結させないとという状況になってしまいます。
ここでも経済的損失とか世界からの信用の問題とか、凍結液製造のための時間稼ぎで国同士の駆け引きがあるなど特撮っぽくない描写が逆にゴジラの出現をリアルに感じさせていきます。
そのゴジラを倒すために電車やビル、そして建機を使った作戦で挑むというのがこれまでの特撮で怪獣に壊されるままになってきたモノたちの復讐のようでした。
(瓦礫に埋まるゴジラの図に、ゴジラより大きな建物が密集している大都会東京を感じる地方民の自分)
ゴジラの凍結を確認した後の大喜びでもないホッとした空気、中盤での瓦礫に手を合わせる姿などリアルな日本の空気も感じました。
最後の凍結したゴジラの尾の先にある何かや、ゴジラの生態を研究する中で出た発言など不安が残る部分も「怪獣を倒してめでたし」で終わらないところのリアルさがありましたね。
ただ、どれだけリアルであっても映画での出来事なのでどれ程の深い絶望感があっても「明日はどうなるんだ」とか「これからどうしよう」と考えなくてもいいですね。
ついでに言えばあの時のように「しっかりしなくっちゃ」とか「怖がってばっかりじゃだめだ」とか、「もっと大変な地域がたくさんあるんだから自分なんかが落ち込んでちゃ駄目だ」と無理しなくても良かったです。
何となく、ただの中学生だったのでしなくてもよかったのに「怖がってちゃだめだ」と押さえつけてた昔の自分の恐怖心がゴジラに許されたような気分でした。
なので、最後にあの頃の自分に「ゴジラめっちゃ怖かった!!!」と言わせて締めくくりとさせていただきます。