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私邸周辺


南座『坂東玉三郎・昆劇 合同公演』

春の京都は観光客だらけです。
外国の人と思われる姿もちらほらと見えます。
ふと、「今月に南座の前を通った欧米の人、ますます中国と日本がごっちゃになるんじゃなかろうか…」と思いました。

そんなわけで、南座に行ってきました。

演目と大まかなあらすじなんかはこの辺、普段なら配役もあるのですが今回はなしなのでちょこちょこと本編に書きます。

番付と写真集がセットだと多少お得で、まんまと乗せられて買ってしまいました。
まあどうせ写真集を買わなかったら後悔してましたし、いいきっかけが出来たという事で。

そういう事なので、早速感想を



『牡丹亭』今回の合同公演は目的の一つに、男旦(中国の女形、“旦”が女の役という意味だそうで)の復活というのがあります。
そういう事なので、主役の杜麗娘は玉さまの他に中国の男性が2人演じていました。
場面は遊園・驚夢・堆花・写真・離魂の5場面で、大まかには遊園と堆花は董飛さん、驚夢と離魂は玉さま、写真は劉錚さんが杜麗娘役です。

第1幕『遊園・驚夢・堆花』舞台が始まると杜麗娘と侍女の春香、ここの杜麗娘は董飛さん。
董飛さんは微妙に玉さまに似ていて(身長は董飛さんの方が低いかも)、なかなか綺麗です。
これで玉さまが昆劇と共演しようとしなかったら女形をしようなんて思わなかったわけで、資源の有効活用が出来て何より(綺麗な女形は地球の貴重な資源です)
深窓の令嬢のおっとりした雰囲気がありました。
杜麗娘以外の役は普通に一人一役で、春香や杜麗娘の母は女性が演じています。
この春香が現代人目線ではかなりの萌えキャラでして、くるくるとよく動き回ってお嬢様のお世話をする萌えメイドさんみたいな感じです。
おっとりした杜麗娘(何しろ春の陽気に誘われて花園に行くのが生まれて初めて)と対照的なアクティブな雰囲気で、朱瓔媛さんが好演してました。
貴族の屋敷で昆劇が上演されていた頃は、このアクティブさも杜麗娘のおっとりした雰囲気を引き立てる演出だったのかも知れませんが。

花園に出かけ、屋敷に帰って疲れてうたた寝すると場面が変わって(そこで玉さまに入れ替わる)夢の中の場面になります。
睡夢神(呂福海さん、動きが面白い)が「柳夢梅と杜麗娘は夫婦になる運命なので、夢の中で二人を引き合わせよう」というような事を言うとスッポンから柳夢梅が現れ、夢の中なのにうたた寝の姿勢の杜麗娘を揺り起こして話しかけます。
兪玖林さん演じる柳夢梅は深窓の令嬢に一目ぼれされる説得力のある美男子(イケメンやハンサムというより、漢字書きで美男子)で、話の展開上かなり強引なのですが、杜麗娘の美貌を称えるだけでなく詩の才能の話を持ち出すあたり昔の中国の人もわかってるねぇという感じでした。

玉さまは慣れない演劇だからかちょっと頑張ってる感があるものの、夢の中だからか恋に積極的になってしまっている令嬢を、恋に夢中になってしまっている貴族のお嬢様になっていました。
春なのに空しかった杜麗娘が、柳夢梅に出会って華やぐその華やいだ雰囲気がまさに玉さま。


柳夢梅と杜麗娘が手に手を取り合って舞台から去ると、大花神と花神達が祝福の舞を歌い踊ります。
中華ファンタジー好きは必見です、大らかでゆったりとした雰囲気で美しい女神(あえてここで玉さまの方が綺麗だよ、とイタイファン的な一言を発してみる)や仮面のような不思議なメイクの神々などが舞台中を舞い踊るファンタジックさ。

そして夢が終わり寝言を言っている杜麗娘(これは董飛さん)が母に揺り起こされ、寝言をお上品にはぐらかして終ります。

第2幕『写真』季節は移っても杜麗娘は夢の中で出会った柳夢梅の事が忘れられず、想いは募るばかりでやつれます。そんな杜麗娘を心配する春香がまた萌え…は置いといて、そこで「やせ衰える前に、この美貌を絵に残さないと!」という杜麗娘。
心の中で「その発想はなかったわ!」とツッコミを入れてしまうのは関西人だからか…
劉錚さんは儚さはあまり感じませんでしたが、貴族の令嬢のプライドみたいなのは感じました。
アジアンビューティーっぽい顔と、自分の美貌の話はマッチしていました。
「夢の中で会ったきりだけど、今でも忘れられない」杜麗娘と「夢は夢ですから」な春香はここでも対比されています。

第3幕『離魂』中秋の名月なのにいよいよ体調の思わしくない杜麗娘、春香は何とか励まそうと月の見える窓のところに連れてきます。しかし、雨で月もあまり見えません。
一曲歌える程度に弱っている杜麗娘、というおきまりのツッコミを入れたくなりますが、玉さまが良かったからいいです。
柳夢梅に対する想い、母への感謝と先立つ不孝への侘び、春香への感謝。
切なく歌い上げ(いつまでも聞いていたいぐらいいい歌でした)、母と春香が嘆く中でこの世を去ります。
後ろで天女のような女神のような姿が舞っているのは、これから先に神の祝福と柳夢梅との再開があるのを暗示しているのでしょうか。
単に寂しいだけの場面はない感じがしますが、やはりダイジェストでも再開する場面が見てみたいと思いました。

『楊貴妃』中国語バージョンなだけでなく、音楽も中国風で、方士も中国の道士みたいな感じで赤い派手な衣装です。
玉さまの楊貴妃は想像以上に人間じゃありません(そういえば杜麗娘は衣装の違い以上に人間でした)じゃあ何だって言われても困りますが。
それから、扇は玉さまの一部です。

まあとにかくよかったわけですが、やっぱり玉さまの楊貴妃の半透明っぽい感じには日本版(通常版?)の柔らかい雰囲気の演奏が合うかな?という感じは少しありました。
これはこれで中華ファンタジーで別物として楽しめましたが。
本場モノ中華ファンタジーで生の舞台ですから、元から中華ファンタジー好きならまさに至福の時間ですよ。

さて、名残を惜しみつつ幕が下りましたがカーテンコールがかなりの時間ありました。

玉さまはカーテンコール大好き人間なのでいいとして、昆劇院の人はちょっと戸惑い気味?
3回目ぐらいで牡丹亭を作った時の作者の心境を描いた歌があったので(これも素晴らしかったです!)おそらくそこまでは計算に入っていたと思うのですが、その後も花道まで出て挨拶したり何度も何度もカーテンコールがありました。

北京ではここまで熱狂的に迎え入れてくれなくても、無事に終ってくれればいいです。
by iwanagahime | 2008-03-28 23:05 | 歌舞伎周辺

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