シネマ歌舞伎 ふるあめりかに袖はぬらさじ | エキサイトシネマ
って事で、シネマ歌舞伎『ふるあめりかに袖はぬらさじ』を観に行って来ましたー。
本当は舞台挨拶の日に行きたかったのですが、チケットが…
という事でMOVIX京都で観ました。
前半のほのぼのとしたお園さんの笑えるやりとり、藤吉と亀遊の恋から悲しく一人で命を絶ってしまう亀遊の儚さ、そして攘夷女郎の話が作り上げられてしまう経緯。
一人で振り回され、巻き込まれていくお園さんのおかしさと悲しさ。
笑って泣けました。
舞台版を観ていないので比較できませんが、シネマ歌舞伎には向いているんじゃないでしょうか。
最初の配役紹介で、一人で海を見ながら三味線を弾くお園さんの後ろ姿と鴎の鳴き声が印象的に使われています。
七之助さんの亀遊は遊郭にいるのもつらいけど、遊郭から出てどう生きたらいいかもわからない、でも藤吉を好きな気持ちだけは本当という感じで、本名を藤吉に告げるあたりは本当に頼りなげで可愛らしい感じでした。
獅童さんの藤吉はあんなに亀遊を思いやって、イリウスが亀遊を身請けしたいという話を訳す時はあんなに苦しそうだったのに、命を絶った亀遊が攘夷女郎と祭り上げられた事で「自分が亀遊を追い詰めたんじゃないんだ!よかった!」とさっさとアメリカに行ってしまうあたりの悪意の無い酷さが妙にぴったりでした。
玉さまのお園さんは芸者としての仕事に忠実なあまりに攘夷女郎の話を作り上げてしまうのですが、話が段々と大げさになっていく過程が実にリアルでした。
月日が過ぎて場面が転換するごとに、攘夷女郎ゆかりの品が部屋に増えてお園さんの話が大げさになっていく過程が観客側からは手に取るようにわかります。
客が「するってーと、あれかい?」と言うように持ち出した話に「そーぉなんですよぉー」と同調しながら、話が大げさになっていくのです。
勘三郎さんの店主はいかにもな感じで(ある意味、商売に忠実ともいえる)亀遊さんをイリウスに売ろうとして追い詰めてしまったのも、お園さんに攘夷女郎の話を適当に合わせるよう言って大変な目にあわせてしまったのも店主なのですが、商売上の仕方なさを感じました。
幇間の猿弥さんや唐人口女郎の福助さん(見てはいけないものを見てしまった気分…)や、攘夷女郎の噂を確かめにやってくる海老蔵さんと舞台の端々まで豪華でした。
お園の話の矛盾に怒る攘夷派の人々も豪華で、勘太郎さんはいかにもそういうのに乗ってしまいそうな、悪くないけど単純な若者らしい雰囲気でした。
三津五郎さんはその話を纏められる貫禄がありました。
お園さんは最初のドタバタっぽい雰囲気から、最後に誰もいなくなった扇の間で嘆く場面までフル回転でした。
美人の役ではないですが、おばちゃんっぽい台詞や斬られかけて腰が抜けて大酒を飲む場面などのかなり崩した場面でも見苦しさがないのが玉さまらしいと思いました。
(見苦しくないのですっきり笑えるんです)
お園さん、攘夷とかそういう政治の話に巻き込まれなかったら、普通に話を合わせるのが上手な面白い芸者さんだったんだろうなぁ。