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江戸の戯画

大阪市立美術館の江戸の戯画を見に行きました、鳥羽絵や鳥獣戯画(写し)から暁斎まで。
期間が長いので後でと思っていましたが目当ての国芳の金魚づくし9点が揃うのが13日までで、12日と13日は予定があるので絶対に混むとわかりながら連休中に行きました。
案の定混んでいましたが、擬人化とか怖そうな題材でゆるい絵とか、高画力で駄洒落とか江戸時代を中心に今でも笑える要素満載でした。
前半の耳鳥斎の地獄絵図は「地獄」ってより「じ~ご~く~」ぐらいのゆるさで、職業別に地獄の様子を描いているのですが、歌舞伎役者の地獄は大根と一緒に煮られていたり、その表情もゆるかったり。
それでいて忠臣蔵など歌舞伎の場面や役者絵の線が少ないのに何の場面かわかる感とか、年中行事で人々の生活がほのぼのと描かれていたり簡略化が良い感じでした(似顔絵系は当時の人ならもっと面白かったんだろうなあ)
北斎はやはり迫力があり、ちょっとした場面の躍動感がすごいのに駄洒落の絵だったり、やけどを治療しようと軟膏を作って塗ろうとしたら出来立てすぎて熱くてやけどがひどくなってる絵だったり、天女が豆腐を焼いてたり。
北斎漫画は色々な人間の動きや表情をサンプル的に絵にしているのですが、それが変顔だったり強風の中であわてる人々だったりもするので何だか面白かったり。
国芳の金魚は期待以上で、金魚の町の料理屋が「みじんこ」料理の店だったり、全体のかわいさもですが細かい部分で擬人化金魚の生活感があるのがよかったです。
一緒に展示されていた擬人化されていない金魚も陶器の欠片に群がっている感じに表情があり、金魚という生き物に対する国芳の視線を感じました。

国芳は他にも亀の顔を歌舞伎役者にした絵が斬新すぎて売れなかったとか、猫で東海道五十三次とか楽しい絵がたくさんありました。
吉原が火事で一時的に廓の外での営業が許可されていた時期は、ちょうど遊女の絵が禁止されていた時期だったそうで、廓の外での営業をPRするために国芳が描いた絵が文字通りの「吉原雀」だったり、歌舞伎の絵が禁止された時は歌舞伎の絵を落書きした壁を描いたという体裁の絵を出したりと規制にユーモアで対抗する姿勢もありました。
暁斎はイソップ童話とかちょっと西洋文化が入って来た感があって、そんな価値観の入れ替わりや世の中の変化を感じる絵も。
他にも名所図のパロディで風光明媚な名所で橋で転んだ人達や流鏑馬で落馬など、真面目な絵と同じ絵柄だから面白い絵がたくさんありました。

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by iwanagahime | 2018-05-05 23:09 | びじゅつ | Trackback | Comments(0)


坂東玉三郎 初春特別舞踊公演

松竹座の坂東玉三郎初春特別舞踊公演に行きました、玉三郎さんと壱太郎さんがメインで口上、元禄花見踊と秋の色種はお二人で、そして壱太郎さんの鷺娘と玉三郎さんの傾城で締めくくる形です。
鷺娘は特に最後に倒れて終わる玉三郎さんタイプの鷺娘なので、玉三郎さんのファンが集まる舞踊公演での挑戦はどちらのファンでもある私には注目ポイントでした。

口上ではいつものあんまり滑らかではない玉三郎さんとハキハキした壱太郎さんでしたが、玉三郎さんが壱太郎さんに何を踊りたいのか聞いたらなかなか答えてもらえず、ぎりぎりで鷺娘だと言われた話もあり、また上方歌舞伎の発展を願う壱太郎さんと玉三郎さんの上方の伝統芸能への暖かい言葉がありがたかったです。
元禄花見踊はとにかく華やかで、花見のにぎやかさの中で立役も女形も美しい姿で踊っている中に不動のセンターと次世代のホープ感のある玉三郎さんと壱太郎さんが際立っていて、それぞれ違う良さがありました。
一言にまとめると、浮遊感と躍動感みたいな。
玉三郎さんの紐を使った踊りがまた、身体の一部であるかのように自然に踊りの動きの延長上で紐がくるくる回ったりしているのが幻想的でした。
秋の色種はまた違った風情で、しっとりとした雰囲気からにじみ出る華がやはり元禄花見踊の春ではなく秋の空気で、琴の演奏もただ演奏するのでなく踊りの一部という感じでした。
元禄花見踊にも秋の色種にも共通して、玉三郎さんがシックな色合いの衣装で壱太郎さんが可愛らしい色使いの衣装なのが姉妹感があって、それぞれの美しさと可愛らしさを強調しているのが衣装も舞台の一部という事を感じました。
壱太郎さんの鷺娘は玉三郎さんの幻想と違って鷺に変じた娘に起きた一部始終を見せるようなリアリティーがあり、また違った魅力がありました。
玉三郎さんの傾城は舞踊でありながら吉原の廓の四季を感じ、また傾城が待っている相手の姿も見えるような、それでいてその傾城もある種の理想化された姿というか「夢のような世界」というありふれた言葉があり得ないほどの実感を持つような舞台でした。

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by iwanagahime | 2018-01-20 23:10 | 歌舞伎周辺 | Trackback | Comments(0)


當る戌歳 吉例顔見世興行 夜の部

年中行事、という事で中村芝翫さんと息子さんたちの襲名披露公演の顔見世に行って来ました。
今年は南座でも歌舞練場でもなくロームシアター京都なので、向かいの京都市勧業会館でも歌舞伎に関する展示があったりといつもと違う場所ながら顔見世の空気を盛り上げていました。



一、良弁杉由来 二月堂
二月堂の場面なので基本的にお坊さんぞろぞろな感じです。
藤十郎さんの渚の方と鴈治郎さんの良弁というリアル親子配役なので、顔を見たらわかるんじゃないか疑惑が浮上しながらも幼い頃に鷲にさらわれた子を探し続けた母親と、大僧正になりながらも親孝行の出来ない身を嘆いていた良弁の身に着けていた観音像が決め手になるまでなかなか親子の名乗りを果たせないもどかしさと、再会してからも遠慮がちな母親とお釈迦様の逸話を引き合いに出してでも親孝行がしたい良弁の心のやり取りが奥深かったです。

二、俄獅子
時蔵さん孝太郎さん梅花さんの芸者と、橋之助・福之助・歌之助の三兄弟の鳶頭による粋な踊り。
お祭りっぽい雰囲気やアクロバティックな場面、屋号が書かれた傘がパッと開いたりと華やかで襲名ムードが盛り上がる舞台でした。

三、人情話文七元結
芝翫さんの長兵衛に扇雀さんのお兼の夫婦に壱太郎さんのお久という一家です。
長兵衛の第一声がすごく不機嫌に「今けえったよ」なので、長屋の近所の住民の気分というか「あー、また長兵衛さんばくちで負けて帰ってきたなー。こりゃ大変な事になるぞ」みたいな空気があります。
色々あって角海老に行くと魁春さんが女将さんで、厳しくも優しい雰囲気。
壱太郎さんのお久がものすごく健気な雰囲気なのもあって、あくまでも「この健気な子に免じて許すんですからね」という空気がびしびしと。
そんなこんなで50両を長兵衛に渡しながらもお久を店に出すのは待ってくれるわけですが、帰りに文七が身投げしようとするのを止めるために50両を渡してしまうわけですが、七之助さんの文七は本来は真面目な感じと放って置くとマジでヤバイ事になりそうな感じとか、おかしくも可哀想な感じでよかったです。
よく考えたら、最後にどうせ石ころだろうと「こんなもの!」と言いながら布越しに叩いてる間に本物の50両だと気付くあたり普段は信頼されていて叩いてる感触でわかるぐらいには扱いなれていますし、長兵衛が一回だけ聞かせた50両の経緯を記憶していてきちんとお久の所までたどり着いているし、文七ってかなり優秀なんでしょうね。
きっと健気なお久も報われるのでしょう。
一瞬しか出てこないのに男前の鳶頭の仁左衛門さん、と思ったらここで劇中口上なんですね。
昼の部では寿曽我対面でカッコいい衣装での口上だったようですが、演目が演目なので扇雀さんは「こんな汚い格好で」と笑いを取っていました。

四、大江山酒天童子
源頼光と酒天童子の話ですが、勘九郎さんの酒天童子が童子の名の通り子供のような雰囲気なのが余計に怖いです。
頼光が七之助さんで平井保昌が橋之助さん、助け出される娘達が壱太郎さんと福之助さん歌之助さん。
頼光と四天王が酒天童子にさらわれた娘達を最初は鬼が化けてるのでは?と疑うので、自分がさらわれる前はどういう状況でどういう身分だったかを踊って聞かせる場面が娘達の見せ場で、それぞれ身分や職業の違いが出ていて面白かったです。
酒天童子は鬼が飲むとパワーダウンして人間が飲むとパワーアップするという都合のいい酒で倒されるのですが、歌舞伎らしくビシッと決まっての幕切れで一年の締めくくりにふさわしかったです。

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by iwanagahime | 2017-12-09 21:57 | 歌舞伎周辺 | Trackback | Comments(0)


坂東玉三郎×鼓童「幽玄」

ロームシアター京都で23日に坂東玉三郎さんと太鼓芸能集団の鼓童のコラボレーションを観に行きました。

和太鼓のグループでのステージというと、大きな太鼓をドンドコとダイナミックに鳴らすイメージでそのような場面もあるのですが、『幽玄』というタイトルで能を題材にしているためかそういうイメージを覆すような演出も多く、玉三郎さん演出で出演はしないこれまでの鼓童の舞台でもこれまでの和太鼓のイメージからすると違ったものがありましたが、それ以上に太鼓の今までと違った面を見た印象でした。
特に最初の羽衣を題材にしたものは、裃姿で小さな太鼓を並べて漣のように演奏する場面が続き、太鼓の演奏をメインにした舞台では今までて最も静かなのではと思うような演奏でした。
玉三郎さんだけでなく花柳流の舞踊家の舞も繰り広げられるのですが、羽衣を拾った漁師や石橋の獅子だけでなく黒い着物で袴姿の扇を持った男性舞踊家の集団が、シンプルな舞台装置の中でモブ兼背景兼特殊効果のような役割をしていて面白かったです。
羽衣を巡る漁師とのやり取りは台詞はなく、演奏と舞踊だけで語られる世界で時間の感覚がなくなるような不思議な舞台でした。
休憩を挟んで道成寺と石橋が続けてなのですが、道成寺の最後の僧達の場面から仏教的な演出があり、そこから石橋を訪れる僧に変化する流れが良かったです。
道成寺は能の道成寺の進行ながら玉三郎さんの衣装は京鹿子娘道成寺の花子の姿で、華やかな姿の中に潜む怨念がじわじわと舞台を蝕んでいくようでした。
そして蛇体は石見神楽の大蛇の演出で表現され、太鼓の演奏も迫力あるものに変わっていきます。
木魚を含む演奏家が4人でリズミカルに演奏したかと思うと、三人で三面六臂の仏像のような姿を作り、木魚の演奏家がそれを拝む場面を挟んで石橋へと移ります。
玉三郎さんの獅子の他に四人の花柳流の舞踊家の獅子がいて、全員が鏡獅子のような白い獅子の姿ですが、玉三郎さんだけ衣装が微妙に違います。
玉三郎さんの獅子がうなずくように首を振ると、それに答えて他の獅子が会話をするように首を振ったりと異世界の生物の会話らしい演出があり、毛振りの迫力がありながらも神秘的なイメージの獅子達でした。
能を題材に歌舞伎の玉三郎さんが演出と出演で、花柳流の舞踊家が参加し、鼓童が演奏するという舞台でしたが、それぞれの要素がありながらどれでもなく、能の雰囲気とストーリーを残しながら鼓童の迫力とスピード感があり、玉三郎さんと花柳流の舞踊が華やかに表現する全く新しい舞台でした。

カーテンコールでは全員が礼をし、観客がそれに応え、またそれに演者が礼で応える暖かい余韻がありました。

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by iwanagahime | 2017-09-30 23:35 | 見たもの周辺 | Trackback | Comments(0)


松竹座 七月大歌舞伎(夜の部)

他の予定との兼ね合いとかで行く日を迷っている間にチケットがほとんど売り切れていたのが、行ける日の中で奇跡的に3等席だけある日があったので何とか行けました。
お財布事情は芳しくなかったのですが、結論から言うと行ってよかったです。

一、舌出三番叟
鴈治郎さんと壱太郎さんという見た目がとにかくめでたさ抜群で三番叟のおごそかさもありましたが、めでたさ先行な感じで華やかでした。

二、盟三五大切
ほぼ「どんな話だっけ?」状態で行ってしまいましたが、忠臣蔵の仇討ちに参加したい浪人と百両が必要という基本を抑えておけばわかりやすかったですし、何より演技の迫力もあって凄かったです。
浪人の身で百両を用意するには誰かお金を持っている人に味方してもらうか、不正な手段を用いるかしないという「百両」というお金の大きさ、仇討ちという大きな目的と特殊な状況(事情を簡単に明かせない、正体も言えない)ゆえに本来は百両を渡して助けたい源五兵衛の顔を知らずに百両を騙し取ってしまう三五郎の悲惨さ。
伯父の温情で仇討ちのためにもらった百両を小万への愛情に流されて騙されてしまい、やがて騙された恨みから凶行に及んでしまう源五兵衛。
小万はただただ三五郎のためだけに動き、その三五郎への愛情が源五兵衛の小万への憎しみを増してしまう悲しみ。
それぞれ少しずつタイミングが違えばここまでの悲劇は起きなかったのではないかと思うほどそれぞれの人物がリアルで、演じる仁左衛門さんと時蔵さんと染五郎さんの素晴らしさもあり最後まで目が離せなかったです。
メインの三人以外だと、松也さんの八右衛門の忠義が切なくてよかったです。
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by iwanagahime | 2017-07-22 22:13 | 歌舞伎周辺 | Trackback | Comments(0)


シネマ歌舞伎 東海道中膝栗毛<やじきた>

奇想天外!お伊勢参りなのにラスベガス?!
でも充分意味がわからないのに、弥次郎兵衛 喜多八 宙乗り相勤め申し候という事で何が書いてあるか単語単語はわかるのに全体を読むとまったく意味がわからない事が書いてあり、実際に見た人のレポを読んでもわけがわからなかった東海道中膝栗毛がシネマ歌舞伎で登場という事で行ってきました。
染五郎さんと猿之助さんでこのノリだと初心者にも取っ付きやすい、敷居の低いものだとは思っていましたが、敷居が高いと思ってまたいだら上からたらいがドリフのように降ってきた感じでした。
何しろ最初に舞台上に芝居小屋があって春猿さんの静御前と猿弥さんの忠信で吉野山をやっていると思ったら、黒衣が色々なものを渡しそびれたり、座る用意を忘れて静御前がひっくり返ったり、まさにオール歌舞伎キャストによるドリフ歌舞伎コントで、その失敗ばかりの黒衣が実は弥次喜多の二人!
そしてひどい失敗ばかりの舞台にスキャンダルのにおいをかぎつけた読売屋の名前が文春(ふみはる)という、かなりスレスレな笑いに満ち溢れてました。
弥次さん喜多さんのダメ人間さも上手くキャラ分けされていて、基本的に悪い人じゃないけど天然で何をやっても失敗ばかりな弥次さんと、ぱっと見は弥次さんより頭が回ってしっかりしていそうなのに積極的に悪い方向に向かう喜多さんという雰囲気で、絶対にこの二人で旅をすると何かが起きるという予感しかなかったです。
いい大人なのに駄目駄目な弥次喜多の二人と対照的に、立派な志を持ってお伊勢参りに向かう子どもの主従の梵太郎と政之助がそれぞれ染五郎さんのご子息の金太郎くんと、猿之助さんの親戚である團子くん(中車さんのご子息)だったのですが、この二人が明らかにシリアスで漫画だったら絵柄が違うんじゃないかというぐらいの感じだったのが面白かったです。
文春(ふみはる)は回り舞台を利用したキャラクター紹介でもノリノリでキャラクターの名前とキャッチフレーズを紹介していて大活躍だったのですが、シネマ歌舞伎ならではの演出としてキャラクターの紹介のときにアニメっぽいストップモーションになってキャラクターをあらわす小道具が描かれていたりシネマならではの演出もあって、こういう笑いを取る作品だとどうしても生の空気とは違ってしまう部分を上手く再構築している感じで出来る人が本気で笑いを取りに来たのがわかりました。
それなのに、ラスベガスでなぜか獅子王をやるはめに陥った弥次喜多が獅子を演じた時は顔は弥次喜多なのに本気の毛振りで迫力があるのがなんともまた(最後はオチが付きますが)
実は化け物だった女役者の十六夜が歌舞伎っぽい名乗りをしている横で弥次さんが「何言ってるかわかんねぇ」と言ったり、そろそろ弥次喜多より子ども主従が真面目というのが定着したあたりでラマンチャやヤマトタケルの台詞が混ざっていたりと油断できない面白さ。
観終わって思ったのは、一ヶ月間このテンションを維持し続けた出演者の皆さんの素晴らしさでした。

東海道中膝栗毛<やじきた>

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by iwanagahime | 2017-06-10 22:09 | 歌舞伎周辺 | Trackback | Comments(0)


松竹座 五月花形歌舞伎(昼の部)

猿之助さんは久しぶりだったので、五月花形歌舞伎に行きました。
中村屋兄弟に猿之助さんだと、花形より強そう(?)なイメージですが適当な言葉も思い付かないですね。
一、戻駕色相肩
勘九郎さんと歌昇さんが担ぐ駕籠に児太郎さんのかむろが乗って春の風景の中にやってくるという、字だけでも華やかな一幕。
最後に実は!という展開でバーンと迫力ある場面になるのですが、前半の軽やかさとのコントラストが鮮やかでした。

二、金幣猿島郡
前に猿之助さんのドキュメンタリー(かなり前だったので、亀治郎時代かも知れない)で部分を見た事があり、それで全体を一度は観たかった演目だったのですが想像以上でした。
平将門の妹である七綾姫という美女、彼女と恋仲ゆえに朝敵の疑いをかけられ、疑いを晴らすために村雨丸という刀を探す頼光の二人にそれぞれ横恋慕する者がいるのですが、七綾姫に横恋慕するのは忠文という傘と手紙をどっかで見たようなスタイルで持って登場する元は身分の高い男性、頼光に横恋慕するのは清姫というどこかで聞いた事のある名前の女性という事でパロディ要素もありつつまとまった話として展開する面白さがありました。
七綾姫は七之助さんで頼光は勘九郎さんなので色々と説得力があり、想いを寄せる清姫をちょっと健気に感じてしまう頼光に妬く七綾姫や、七綾姫が具合が悪くなった時に口移しで薬を飲ませる頼光の見せ付けてる訳じゃないのにナチュラルに見せ付けてしまう感じとか良かったです。
それぞれに横恋慕する忠文と清姫は猿之助さんの二役で、最終的に鬼と蛇になって合体してしまうという恐ろしさなのですが、片思いの相手はすでに恋人がいるのに未練がましく食い下がってしまう姿が最初は笑える感じなのがどんどん狂気を帯びていき、最終的に人ではない姿になる恐ろしさが見ごたえがありました。
また、その過程の違いも清姫は盲目の時は「仮に一目惚れした相手に再会しても、目が見えなくては顔も見えない、ならば七綾姫の身代わりに討たれて役に立ちたい」と健気なのに、村雨丸の力で視力を取り戻すと「目が見えて相手も見つかったからには生きる、七綾姫は恋敵なので身代わりなんて真っ平!むしろ許さん!」と豹変する様から、七綾姫の追っ手との戦いに巻き込まれて命の危機になった時に潔く成仏するよう言う母の言葉を聞かずに怨念から蛇になるという絶望→嫉妬→狂気というプロセスが丁寧、忠文は最初から七綾姫の「兄を助けてくれたら結婚します」という手紙に釣られているので、それさえなければ領地も身分も失わなかったという所から愛憎入り混じっている部分があり、七綾姫と頼光との仲の良さを見てしまって発狂するという違いを感じました。
そうやって蛇と鬼になった二人の霊が合体して宙乗りで飛び去って行く訳ですが、猿之助さんの宙乗りは空中にもう一つ地面があるのではないかというぐらい演技をしながら飛んでいて、忠文と清姫が交互に現れて、さらに客席にアピールまでするという、求められて1000回達成も当たり前という感じでした。
(宙乗りしてるぞドヤァァァ!な宙乗りも、別物として好きなんですが)

そんな二人の霊を慰めようと三井寺の鐘供養をする頼光ってかなりいい人なんでは、と思うのですが朝敵の疑いも晴れて七綾姫といよいよ祝言となると二人の霊も黙ってない訳で、祝言に追っ手が乱入しないように男子禁制と偽っているところに中の人が猿之助さんの白拍子(に化けた狂言師・白雲坊と黒雲坊によると女装男子がやってきて、当然のように三井寺だけど道成寺な展開になります。
三面の舞を七之助さんと勘九郎さんを相手にくるくると面と仕草を変えながらの舞は流石としか言いようがない見事さで、この配役で観られて良かったです。

最後になりましたが、七綾姫を匿う乳母と侍女の門之助さんと笑三郎さんが追っ手と戦う姿が儚くもカッコよかったです。
いやー、いいもの観たなあ。

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by iwanagahime | 2017-05-20 22:36 | 歌舞伎周辺 | Trackback | Comments(0)


二月花形歌舞伎(午後の部)

二月花形歌舞伎[画像]
色々やっている間に千秋楽になってしまいましたが、まずはおめでとうございます。
という訳で楽日も近い日に二月花形歌舞伎、午後の部に行きました。
今月はどっちかというと個人的には女形で見たい壱太郎さんと尾上右近さんが立役でしたが、新たな魅力を見た感じで良かったです。
もちろん女形として出ていた梅枝さんと新悟さんもそれぞれの役で良い感じでした。


最初に松也さんのご挨拶、歌舞伎らしく口上で始まるのかと思ったら急に普通発声でのトークになって一笑い。

演目の紹介や観客への感謝など、そして右近さんに強要された(?)という「研の會」のDVD(右近さん個人の会)の宣伝ありと手短でわかりやすくまとめていました。


一、金閣寺

舞台装置が華やかで歌舞伎らしいながら、長い話の一部なので背景が頭に入ってないと難しい面もあるお話。
雪姫の梅枝さんをはじめとして、松永大膳の又五郎さん以外は慶寿院も新悟さんと若手配役で金閣ぐらいまぶしかったです。
そして、雪姫と直信の別れる場面の切なさからの現実感のない大量の花吹雪とかファンタジー100%。
全員が良かったですが、特に真柴久吉の歌昇さんと佐藤正清の種之助さんが実はものすごい計略をしている雰囲気があってよかったです。

二、連獅子

松也さんの親獅子と右近さんの仔獅子、年齢が親子ほどは違わないので「親っぽさ」とか「仔らしさ」の演技が強調されて見える感じですね。

宗論の國矢さんと玉雪さんも舞台を引き締めてました。

後半の獅子になってからは迫力しかないというか、若手の連獅子らしい勢いが舞台からはみ出してました。


若手だから足りない部分もあるんでしょうけど、若手らしい良さみたいなものが感じ取れた舞台だと思いました。


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by iwanagahime | 2017-02-25 22:28 | 歌舞伎周辺 | Trackback | Comments(0)


シネマ歌舞伎『阿古屋』

阿古屋[画像]
現在では演じられるのは玉三郎さんお一人という阿古屋のシネマ歌舞伎版ですが、玉三郎さんも公式サイトで述べられているように動きの少ないお芝居ですのでシネマ歌舞伎には向かないかと思っていました。
私も実際の舞台も見た事がありますが、演奏の場面では舞台と客席の空気のようなものも影響しているイメージでしたし。
しかし、その空気は舞台を作り上げていく過程を映像として見せる事でカバーしている感じで、ドキュメンタリー映像と実際の舞台映像を続けて見る事で積み上げられていた緊張とその結果として美しいものが出来上がるという実現を見せているようでした。
鬘や衣装、楽器の用意や大道具や照明、そして出演者の全員。
竹田奴の一人一人とその指導にあたるベテランの菊十郎さんの映像は、舞台では面白いものとして見える竹田奴だからこそ真剣に作っている姿が見ごたえがありました。

そして出来上がった舞台は玉三郎さんの一瞬一瞬が全て阿古屋として美しく、景清を想いながら景清の行方を知らない悲しさがこもった演奏でした。
その心を見抜く重忠の菊之助さんも音楽から心を見抜きそうな雰囲気がして、すっきりした重忠でした。
亀三郎さんは残酷な台詞を言いながらもどこかコミカルな岩永を、人形だからこそ出る人間味を感じさせつつ演じていました。

全国での上映は終わっていますが、シネマ歌舞伎ですのでまた上映される機会もあるかと思います。
そして、玉三郎さんに続く阿古屋が出る事を願っています。

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by iwanagahime | 2017-01-28 23:34 | 歌舞伎周辺 | Trackback | Comments(0)


幕見から幕見

松竹座と国立文楽劇場は地下街を通れば退屈せずに徒歩で行ける距離なのですが、今月はどちらも幕見があるので同じ日に両方で幕見をしてきました。
まずは松竹座
石切梶原[画像]
橋之助さんが芝翫さんになられるという事で、松竹座での襲名披露。
梶原平三誉石切を見ました。
襲名披露では配役が豪華になるもので、たまに豪華すぎてバランスが何だか~という事があるのですが今回はそれがなく、全てを見通す目と名刀に対する礼儀正しさのある武士らしい芝翫さんの梶原に偉そうだけどちょっと色々と見る目がない鴈治郎さんの大庭三郎、そして何か事情がありそうな東蔵さんの六郎太夫と児太郎さんの梢の親子を中心に、作りこまれたキャラクターがとてもわかりやすく話が頭に入りやすい感じでした。
(試し斬りの後、六郎太夫が生きているとわかった時の嬉しい音楽が「斬れてない」事に気付いてストップするあたりも)
彌十郎さんが剣菱呑助というのが襲名興行っぽかったですが。
親子の事情も刀が本当に名作かも何もかもお見通しで刀にも礼を尽くす梶原と、見ただけでは刀がわからず試し斬りを要求し、それに対して自分の命を投げ出そうとする六郎太夫を「金がほしいのか」と事情もわからない大庭三郎の対比がしっかり見られるので登場人物の状況も気持ちもよくわかるように思いました。

地下街を通って国立文楽劇場へ(天候に左右されないのが地下の良い所)
本朝廿四孝[画像]
本朝二十四孝を見ました。
十種香の段では勝頼と濡衣の任務と心の動きに八重垣姫の恋心という複雑な状況が、豪華な配役で手に取るようにわかります。
また、八重垣姫の「許婚の肖像画が美しかったので姫御前の果報者と思っていた」というような内容の言葉に政略結婚でどんな相手に嫁がせられるかわからなかった姫という立場と、幸運にも同世代のイケメンと婚約したと思ったのにそれが世の流れで相手の切腹で終わるという悲しみもわかりやすく、そして肖像画にそっくりの人が現れた希望もまた大人の事情に振り回されてしまうという切なさがあるので、奥庭狐火の段の狐の力でファンタジー入った描写も自然な流れに見えて来るというパワーみたいなものを感じました。

こんな近くに良い劇場が二つもあるので一度やってみたかったですが、ちょうど良い感じに見たい演目が重ならず幕見が出来てよかったです。

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by iwanagahime | 2017-01-14 23:18 | 見たもの周辺 | Trackback | Comments(0)

    

本サイト弓戸亜朗私邸では書ききれなかった小さい事を、主:亜朗(iwanagahime)がどこまでも核心に迫らないまま書くブログ、だいたいそんな感じで。
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